華劇「ジュリオの結婚」後編
【あらすじ】
アンジェロの裁判に駆けつけたジュリオ。
弁護も虚しく、アヴィードと交わした非情な契約が
今まさに執行されようとしていた。
【登場人物】
ジュリオ:初生谷浩史(CV野島健児)
カーラ:常盤薫(CV代永翼)
アンジェロ:常盤薫(CV代永翼)
裁判官:常盤薫(CV代永翼)
アヴィード:初生谷浩史(CV野島健児)
■ヴェニスの法廷
裁判官
「両者が交わした契約に基づき、アヴィードに、
アンジェロの胸の肉1ポンドを切り取らせることを認めよう」
アヴィード
「ははっ! 覚悟しろ! アンジェロ!」
裁判官
「まあ待て。判決はまだ終わらぬ。
確かに『胸の肉1ポンドを切り取る』ことは許したが……
肉を切り取る際、アンジェロの血を一滴でも流してはならぬ」
アヴィード
「なんだって!? ふ、ふざけるなっ!そんなこと、できるわけがない!」
裁判官
「この契約書には『胸の肉1ポンド』としか書かれていないからな」
裁判官
「さあ、アヴィード。契約に基づき、アンジェロの胸の肉を切り取るのだ。
だがもし、血を一滴でも流させれば、それは契約に違反したことになる。
アンジェロが死んだ場合は、お前は殺人罪で罰せられるぞ」
アヴィード
「くそっ! バカバカしい! やっていられるかっ!
もういい、貸した金の倍だ!それで勘弁してやる!」
裁判官
「アヴィード。……先ほどお前は、金はいらないと言ったな。
一度断った申し立ては既に無効だ。そしてもう一つ。
お前は、アンジェロが死ぬのを承知で『胸の肉1ポンド』を望んだな。
それは明らかな殺人未遂だ」
アヴィード
「……っっ!」
裁判官
「アヴィードよ。殺人未遂の罪で、お前の土地と全財産を没収し、
死刑とする」
アヴィード
「そ、そんな……バカなっ!」
アンジェロ
「お待ちください!裁判官殿、俺は亡くしたと思った命を助けていただいた。
それだけで十分です。どうかアヴィードへ、ご慈悲を。」
裁判官
「……そうか。では、アンジェロとアヴィードが交わした契約を無効とする。
命拾いしたな、アヴィード。」
アヴィード
「……くっ」
ジュリオ
「よかった! アンジェロ! 本当によかった!!」
アンジェロ
「ありがとう、ジュリオ……」
裁判官
「では、これにて閉廷とする」
■ヴェニスの法廷前
ジュリオ
「裁判官殿! 先ほどは、本当にありがとうございました!
おかげで大事な親友を失わずに済みました!」
カーラ
(あらジュリオったら、裁判官が私だって、まだ気づいていないのね)
ジュリオ
「何よりも大切な親友の命を救っていただいたのです!
何でもいい! 御礼をさせてください!」
裁判官
「私は法と真実に基づき、判決を下しただけですが……」
カーラ
(ジュリオったら、本当にうれしそう。良かったわ。
……でも、『アンジェロのことが何よりも大切』だなんて、
妻としてはちょっと複雑な気分だったわ。
……そうだ、ちょっと意地悪しちゃおうかしら)
裁判官
「……では、貴方のその指輪をいただけますか?」
ジュリオ
「え!? いや、この指輪は!」
裁判官
「どうしたのです? なんでも御礼をくれるのではなかったのですか?」
ジュリオ
「は、はい。確かにそう言いました。
でもこれは、愛する妻からの贈り物なんです。
僕はこの指輪を決して手放さないと妻と約束しました。
どうかこれだけは勘弁してください」
裁判官
「なるほど。それは大事なものなのですね。
でも、私はこの指輪に見合う仕事をしたはずですよ?」
ジュリオ
「確かにそうですが……」
裁判官
「……それに、貴方の奥様は、指輪と貴方の親友の命を天秤にかけるような
冷たい方なのでしょうか?
事情を知れば納得していただけるのではないですか?」
ジュリオ
「確かに彼女は愛情深い女性だ……
分かりました。指輪を貴方に差し上げます」
■ベルモントにおけるカーラの家の広間
ジュリオ
「……裁判官殿はああ言ったが、カーラには指輪のことを、
どう説明すればいいんだろう?」
カーラ
「ジュリオ! お帰りなさい! 裁判はどうだったの?」
ジュリオ
「ただいま、カーラ。一時はどうなるかと思ったけど、
裁判官殿がとても有能な方でね、アンジェロの命は助かったよ!」
カーラ
「そう! 良かったわね!(まぁ、有能だなんて!)」
カーラ
「それはそうと、ジュリオ、私の贈った指輪をしていないようだけれど?」
ジュリオ
「ああ…実は…アンジェロを救ってくれた裁判官殿に何かお礼をしたいと
申し出たところ、どうしても指輪が欲しいと言われて……」
カーラ
「嘘よ! そんなことを望む裁判官がいるわけないわ!
貴方、他の女性にあげてしまったんでしょう! この浮気もの!」
ジュリオ
「違うんだ! カーラ!」
ジュリオ
(ああ……僕はなんてことをしてしまったんだろう)
ジュリオ
「すまない……カーラ……でも、神に誓って僕は浮気なんてしていないよ!」
カーラ
「本当に? だったら今後はもっと、指輪も私のことも、大事にしてね?」
#カーラがジュリオに指輪を見せる
ジュリオ
「そ、その指輪は!? なぜ君がこれを持っているんだい!?」
カーラ
「ふふふ……まだ気が付かないの? あの時の裁判官は私だったのよ。」
ジュリオ「なんてことだ……あの名判決を下したのが、カーラ、君だったなんて……
君は美しいだけでなく、賢く、そしてとても大胆な勇気をもっているんだね。
そんな女性を妻にできるなんて、僕はなんて幸せものだろう!」
カーラ
「私も、貴方は友情を大事にする素晴らしい人なんだって感動したわ。
指輪を渡したことだって、貴方が誠実だってことの証だもの」
ジュリオ
「カーラ……ありがとう」
カーラ
「あら? 誰か来たわ、誰かしら」
#カーラ、玄関へ向かい、戻ってくる
カーラ
「ジュリオ、貴方へ手紙よ!」
#カーラがジュリオに手紙を渡す
ジュリオ
「……アンジェロからだ! ……カーラ!
アンジェロの船が見つかって、積荷も無事だったそうだ!
彼は財産を失わずにすんだって! ああ、なんて奇跡だろう!」
カーラ
「まあ! それは良かったわね!」
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