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前編 後編


華劇「ジュリオの結婚」前編

【あらすじ】
平凡で貧乏な男ジュリオは、長年想い続けていた
大金持ちの娘カーラと結婚をし、幸せを噛み締めていた。
しかし、そんなジュリオに一通の手紙が届く…。


【登場人物】
ジュリオ:初生谷浩史(CV野島健児)
カーラ:常盤薫(CV代永翼)
アンジェロ:常盤薫(CV代永翼)
裁判官:常盤薫(CV代永翼)
アヴィード:初生谷浩史(CV野島健児)

■ベルモントのカーラの家の広間

ジュリオ
「ああ……夢のようだ。長年想っていた君とこうして結婚できるなんて」

カーラ
「私も、貴方のように素敵な男性と巡り合えて幸せよ。」

ジュリオ
「でもカーラ……本当に僕みたいに貧しい平凡な男で良かったのかい?」

カーラ
「お金も特別な才能もいらないわ。
 だって、お金なら父が残してくれた財産で不自由していないもの。
 ただ私を永遠に愛してくれると約束してくれれば、それでいいの。」

ジュリオ
「もちろん。この命にかけても、ずっと君を愛すると誓うとも!」

カーラ
「嬉しいわ……ジュリオ、これを受け取って頂戴」

ジュリオ
「この指輪は?」

カーラ
「この指輪は私たちの愛の証よ。どうか肌身離さず持っていて?」

ジュリオ
「ああ……分かった。決して離さないと誓うよ」

カーラ
「絶対よ。……そういえば、貴方当てに手紙が届いていたんだったわ」

#ジュリオ、カーラから渡された手紙を読む

ジュリオ
「ヴェニスから……アンジェロからだな!……っ! ああ、なんてことだ!」

カーラ
「ど、どうしたの? 貴方、顔が真っ青だわ!
 いったい手紙に何が書いてあったの?」

ジュリオ
「……。この手紙は、僕の親友アンジェロからのものだったんだが……」

カーラ
「アンジェロって、あの『ヴェニスの貿易王』と呼ばれるお方?」

ジュリオ
「そう。彼は商人として優秀なだけじゃない。とても友情に厚い男なんだ。
 ……僕が君に結婚を申し込む時に、君と僕とじゃ、
 とても釣り合わないんじゃないかって悩んでいたところを励ましてくれてね。
 そんな僕のために結婚資金を用意してくれたのが、アンジェロだったんだよ」

カーラ
「まあ! そんなことがあったのね」

ジュリオ
「だけど……その時アンジェロの財産を乗せた船は海の上で、
 お金を用意するために、アヴィードという男に借金をしてしまって……」

カーラ
「アヴィードですって!? とても冷酷で強欲な商人だって有名よ……」

ジュリオ
「ああ。ヤツは本当に残忍な男で、金を貸すにあたり、
 『返済できなければ、胸の肉1ポンドを与える』という条件を出してきた」

カーラ
「そんな……胸の肉を1ポンドも切り取ったら死んでしまうわ!」

ジュリオ
「僕も止めたんだ! でもアンジェロは、親友の恋が実るなら安い契約だ…
 船が戻ってくればお金は返せるから問題ない…と言って、
 契約を交わしてしまったんだ……」

カーラ
「でも、アンジェロさんは借金を返済できたのでしょう?」

ジュリオ
「それが……彼の船が遭難してしまったようだ……。
 手紙には……『全財産を失ってしまった』と書いてある……」

アンジェロ
『俺は、全財産を失ってしまった。
 アヴィードは、金を返せなくなった俺に対して、訴えを起こすつもりだ。
 ジュリオ。俺は、親友である君の結婚を心から祝福している。
 君の幸せの手伝いができたことを、光栄に思っている。
 こんなことになってしまったが、アヴィードと交わした契約は
 正当なものだし、これは俺の問題だ。
 だから、君がこの件で気に病むことはない。
 ただ、叶うならどうかもう一度、君の顔が一目見たい。』

ジュリオ
「ああ、アンジェロ、お前はバカだ。
 こんな僕のために、こんなバカな契約を結んでしまうなんて……
 今すぐにでもお前の元へ行って、僕が代わってやりたい」

カーラ
「ジュリオ……顔を上げて?
 アンジェロさんがアヴィードから借りた2倍のお金を用意しましょう。
 足りなければ3倍でもいいわ。
 それで契約を破棄してもらえるように申し出てみて」

ジュリオ
「カーラ! いいのかい?」

カーラ
「私達は結婚したんだもの。私の財産は貴方の財産でもあるのよ?
 何より……貴方と私の結婚を取り持ってくれた恩人の危機を
 見過ごすわけにはいかないわ」

ジュリオ
 「……ありがとう、カーラ。こうしちゃいられない!
 早速ヴェニスへ行ってくる!必ず彼をを救ってみせるよ!」

#ジュリオが退出する


■ヴェニスの法廷

裁判官
「静粛に。これより、裁判を始める。
 この裁判は、アヴィードがアンジェロへ貸した金について、
 アンジェロが金を返済ができない場合は、アヴィードへ
 「胸の肉1ポンドを与える」という契約に基づき、
 その権利の実行を求めるものである。間違いないか?」

アヴィード
「その通りだ」

裁判官
「アンジェロ代理人、ジュリオ、申し立てはないか?」

ジュリオ
「裁判官殿!アンジェロが借りた金の2倍、いや、10倍の金でも払います!
 何なら僕の手足を切り取っても構いません!
 どうかアンジェロをお救いください!」

裁判官
「ふむ……アヴィードよ、そなたの主張は法的に正しいものだが……
 代理人もああ言っていることだ、ここは慈悲の心をかけてやらんか?」

アヴィード
「慈悲ですと?」

裁判官
「そうだ。胸の肉を1ポンドも切り取れば、アンジェロは死んでしまうぞ?」

アヴィード
「アンジェロが死ぬかどうかなんて、知ったことか!
 裁判官殿、俺は金などいらん!
 俺が望むのは、契約が守られることだけだ!」

アヴィード
(ふん!前から憎いと思っていた商売敵を葬れるチャンスを
 逃すバカがどこにいる。絶対に契約は守ってもらうぞ!)

裁判官
「では仕方があるまい。契約は守られなければならない」

アヴィード
「ふははははっ! やったぞ!」

ジュリオ
「ああ!……なんてことだ!
 アンジェロ……僕は何よりも大事な君を失ってしまうというのか……」

アンジェロ
「ジュリオ、いいんだ、覚悟はできている。これは俺の問題だから。
 ありがとう、君が来てくれて、嬉しかったよ」

裁判官
「静粛に。それでは、両者が交わした契約に基づき、アヴィードに、
 アンジェロの胸の肉1ポンドを切り取らせることを認めよう」

アヴィード
「ははっ! 覚悟しろ! アンジェロ!」



前編 後編

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